師匠として 

 

久しぶりに修行時代の話 

 

マスターがサバティーニに居た時のシェフは、僕が最も尊敬する師匠ですが

 すんごいおっかない人でした

僕もやんちゃだったので、しょっちゅう怒られていました 

 

そして、ある一時からなんか知らないけどマスターの事だけを 

やたらと怒るようになりだし 

フライパンの持ち方から、野菜の切り方 

空いてる時間の過ごし方まで 

それこそもう料理の事だけでなく、コーヒーのいれ方から 

口の利き方まで、それはもう細かい所まで怒られ続けました 

 

 

ぶっちゃけ 「また逃げちゃおうかな」と何度も思っていました 

 

でもまた逃げても、きっと自分自身料理が好きなのを思い知るだけなんだろうと思い 

 何とか耐えて一年ほど(マジで続きました)経った頃

 

 もうやる事なす事駄目だしされるわけですから

自信もすっかり無くなっていて元気もない 

そんなある晩、用事で出かけていたシェフが戻ってくると 

「腹減ったから、なんか飯作ってくれ」と言い 

 まあ僕が作る事になりました(凄い嫌)

 

 賄が出来て運びます

 今でも覚えてるけど、作ったのは「車海老とカルチョーフィのスパゲティー」

 

「どうせまた火加減がどうのとか、海老の切り方がどうのとか言って

 怒られるんだろうなあ・・・」なんて思っていると

 

案の定「これ作ったん誰や!」(もう一寸怒ってるっぽい)

 

「・・・・自分です」

 

 

 そして、僕の顔をまっすぐ見て一言

 

 

 

「美味いやんけ」

 

 

「へ・・・・?」

 

 

「美味いやんけ言うとんじゃこら!(怒」 

 

 

「ああああ 有難うございます!!」 

 

 

一生忘れない一言です 

 

 

 

その後、何年か経って 

僕が東京に戻る事になった時に、師匠はその時の事を話してくれました 

 

「あの時はなあ、毎日家に帰ってもお前の話ばっかりしとった」 

「中村が中村がってな、お前はほんまに手間が掛かったわ」 

その時はじめて気が付きました 

 一人の人間を一人前にするのに、どれほどの労力と責任が伴うのかを

全ての仕事には、魂が宿っている 

だから、いい加減な気持ちで仕事に臨んではいけない

 

 

そんな事を教えてくれたのは、師匠だけでした 

 

 

 

 

 

 

 

 今は僕も人に教える立場についています

 だからこそ、真剣に向かい合う気持ちを忘れない

 それこそが自分のルールなのです